運賃の仕組み


分割すると安くなる理由

ケース1:全般

表1:JR本州3社の幹線運賃
営業キロ運賃
1~3 キロ150 円
4~6 キロ190 円
7~10 キロ200 円
11~15 キロ240 円
16~20 キロ330 円
21~25 キロ420 円
26~30 キロ510 円
31~35 キロ590 円

 上の表の「11~15キロ」と「26~30キロ」の運賃に注目してください。 「11~15キロ」の運賃は「240円」ですが、その倍の「26~30キロ」の運賃は「510円」です。 つまり、「11~15キロ」の区間の乗車券を2枚買えば「480円」で最大30キロ乗車することができる……というのが分割すると安くなる理由の1つです。 上記の区間に限らず、このようなケースは数多くあります。 もちろん、ちょうどよい距離間隔に駅がなければなりませんが、乗車券分割プログラムによって最適なポイントを見つけることができます。 (乗車券分割プログラムでは「きっぷの運賃」を出力します。IC運賃は出力されません。)

ケース2:特定区間

表2:特定区間との比較
営業キロ運賃
61~70 キロ1170 円
71~80 キロ1340 円
81~90 キロ1520 円
91~100 キロ1690 円
表3:特定区間の例
特定区間の例
「特定区間」岐阜 ⇒ 名古屋:  470 円(30.3キロ)
「特定区間」名古屋 ⇒ 岡崎:  620 円(40.1キロ)
分割合計: 1090 円(70.4キロ)
一括購入: 1340 円(70.4キロ)

 「岐阜 ⇒ 岡崎」のキロ数は70.4キロ(切り上げで71キロ)ですので、普通運賃は「1340円」です。 しかし「岐阜 ⇒ 名古屋」と「名古屋 ⇒ 岡崎」は、並行する他社路線に対抗するための「特定区間」とされており、運賃が割安です。 そのため、乗車券分割による効果が大きくなります。

ケース3:長距離運賃

表4:長距離運賃の比較
営業キロ運賃
681~720 キロ10340 円
721~760 キロ10670 円
761~800 キロ11000 円
801~840 キロ11330 円
表5:長距離運賃の分割例
長距離運賃の分割例
大垣 ⇒ 穂積:  200 円(  7.7キロ)
穂積 ⇒ 仙台市内: 10670 円(754.1キロ)
分割合計: 10870 円(761.8キロ)
一括購入: 11000 円(761.8キロ)

 「大垣 ⇒ 仙台」のキロ数は761.8キロ(切り上げで762キロ)で、普通運賃は「11000円」です。 長距離になれば賃率(=1キロあたりの運賃)が下がりますので、通常は分割するメリットが小さくなります。 ただし、距離区分のキロ幅が広がりますので、隣の運賃区分との差が大きくなります。 そのため、上記のような一駅だけの乗車券との組み合わせが有効となります。

ケース4:東京、大阪の電車特定区間

表6:幹線と電車特定区間(東京)の比較
営業キロ幹線東電特
11~15 キロ240 円230 円
16~20 キロ330 円320 円
21~25 キロ420 円410 円
26~30 キロ510 円490 円
31~35 キロ590 円580 円
表7:電車特定区間運賃との組み合わせ
電車特定区間運賃との組み合わせの例
熱海 ⇒ 大船:  990 円(58.1キロ)
大船 ⇒ 保土ヶ谷:  230 円(14.7キロ)
保土ヶ谷 ⇒ 蒲田:  320 円(17.4キロ)
分割合計: 1540 円(90.2キロ)
一括購入: 1690 円(90.2キロ)

 東京、及び大阪近辺には電車特定区間が設定されています。 電車特定区間内で完結する乗車券の運賃は、通常の幹線運賃より割安になります。 しかし、電車特定区間と通常の幹線区間をまたがる場合は、全区間が通常の幹線運賃として計算されますので割高になります。 そのため、電車特定区間内だけで完結するよう乗車券を分割することで、安くなるケースがあります。
 上記の例は、「熱海 ⇒ 蒲田」の乗車券ですが、そのうちの「大船 ⇒ 蒲田」が電車特定区間です。 大船で分割するだけでなく、更に保土ヶ谷で分割することで、より安くすることができます。 (なお上記は「きっぷの運賃」であり、JR東日本のIC運賃の場合は「保土ヶ谷 ⇒ 蒲田」が318円となります。)

ケース5:特定都区市内

表8:特定都区市内の比較
運賃計算キロ運賃
201~220 キロ3740 円
221~240 キロ4070 円
241~260 キロ4510 円
261~280 キロ4840 円
表9:特定都区市内の活用例
特定都区市内の活用例
猪谷 ⇒ 名古屋市内: 4070 円(238.4キロ)
大高 ⇒ 西岡崎:  420 円( 23.5キロ)
分割合計:  4490 円(261.9キロ)
一括購入:  4840 円(274.3キロ)

 「猪谷 ⇒ 西岡崎」の運賃計算キロは274.3キロ(切り上げで275キロ)ですので、運賃は「4840円」です。 また「猪谷 ⇒ 名古屋」の運賃計算キロは238.4キロ(切り上げで239キロ)ですので、「4070円」です。 この名古屋までの乗車券は営業キロが200キロを超えており、かつ特定都区市内着ですので、「名古屋市内」までの乗車券になります。 「猪谷 ⇒ 大高」は運賃計算キロが250.8キロ(切り上げで251キロ)ですが、大高は「名古屋市内」の範囲内ですので、上記の乗車券で行くことができます。 その結果、上記のような「猪谷 ⇒ 名古屋市内」、「大高 ⇒ 西岡崎」の乗車券分割が成立します。


賃率からの運賃計算

基本賃率

 運賃には基本賃率というものがあり、それに従って運賃が定められています。 ここでは、普通乗車券の運賃を賃率から計算して求めてみます。

表10:JR本州3社の幹線運賃の基本賃率
キロ数基本賃率
(第1地帯) 1~300 キロ16.2 円
(第2地帯)301~600 キロ12.85 円
(第3地帯)601 キロ~7.05 円
基本賃率の例外1~3キロの運賃:150 円
4~6キロの運賃:190 円
7~10キロの運賃:200 円

 賃率とは「1キロあたりの運賃」のことです。 名目上は「賃率 × キロ数 = 運賃」ですが、実際にはキロ数(営業キロ)に賃率をかけるだけの単純な計算では、運賃を求めることができません。

運賃計算

 それでは、どのように運賃を計算するのか、賃率を使用して実際に計算してみましょう。

運賃を計算する区間の営業キロを入力して「計算」ボタンを押してください。
下に計算手順と結果が表示されます。 キロ

この乗車券は キロ区間の乗車券になります。
その運賃は、上記キロ区間の平均値(整数) から求めることができます。
(基本賃率は300キロまでは16.2、301キロから600キロまでは12.85、601キロからは7.05です。)

16.2 × + 12.85 × + 7.05 × です。
この値の の位を ると になります。
そして消費税(10%)を加えると となり、
1の位を四捨五入(※)すると になります。
  円です。
この乗車券(片道)の有効期間は 日間です。
※ JR東日本のIC運賃の場合、最後の「1の位の四捨五入」を行わず「小数点以下の切り捨て」を行います。

注:JavaScriptが動作しない環境では結果が表示されません。

 「JR本州3社の幹線」以外でも、地方交通線や電車特定区間などそれぞれの基本賃率が定められておりますが、諸般の事情で様々な調整が行われているため、単純には計算できないことがあります。


きっぷの運賃とJR東日本のIC運賃

「IC運賃」の導入に伴う「きっぷの運賃」の値上げ

 平成26年4月1日、JR東日本ではIC運賃が導入され、消費税で生じた1円単位の端数を処理しない運賃体系となりました。 これに伴い、東京の電車特定区間(東京山手線内を含む)の「きっぷ(ICカードではない普通乗車券)」の運賃計算方法が変更されました。 具体的には、これまで「四捨五入」していたものを「切り上げ」するようになりました。 一方で、東京の電車特定区間以外の区間では、従来どおり「四捨五入」を行います。
 そのため、東京の電車特定区間では必ず「きっぷの運賃」の方が「IC運賃」より高くなるか同額となりますが、その他の区間では「きっぷの運賃」の方が「IC運賃」より安くなることがあります。

「IC運賃」の導入で運賃は「適正」になったのか

 IC運賃は消費税で生じた1円単位の端数を四捨五入しませんので、従来よりもより細かく正確に反映されることとなりました。 しかし、運賃計算の基本的な考え方である「賃率 × キロ数 = 運賃」には、ほとんど近づいていません。 それは、消費税の端数を四捨五入する以前に税抜き運賃を計算する過程で「10円未満の切り上げ」や「100円未満の四捨五入」が行われており、数円どころか数十円の誤差が生じているためです。 「適正ではない税抜き運賃」に「適正な消費税」を反映しても、適正な運賃にはなりません。 IC運賃の適正化の対象はあくまで「消費税」であるため、JR東日本の主張に間違いはありませんが、根本的な部分は従来のままとなっています。